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ゴールドを選ぶ理由

虫歯治療にゴールドを選ぶ1番の理由は、
他の材料と比べ、ゴールドは長持ちする可能性が圧倒的に高い、ということ。

装着後60年が経過したゴールド

装着後60年が経過したゴールドの詰めもの

もし、ゴールドをためらう理由があるとすれば、それは、歯の色ではないということです。

7年後の白い詰めもの

治療後6年が経過して変色し、2次虫歯の疑いがある白い詰めもの(コンポジットレジン)

治療後40年以上を問題なく過ごしたゴールドの写真は、数え切れないほどあります。
しかし、治療後10年以上で良い状態の白い詰めものの写真は、あまり見つけることができません。

再治療を避けて、自分の歯を可能な限り残したい、治療した詰めものをできるだけ長く使いたい、
となればゴールドを選ぶ理由となるでしょう。

以下に、タッカー先生のゴールドに対する意見を紹介します。

タッカー先生は、自分の奥さんに対し、ゴールドによる虫歯治療を施しました。
それらは、1本も失敗することなく、再治療することなく、60年以上機能したことに喜び、
この素晴らしい治療法を、世の中に広める活動をしています。


なぜ、ゴールドは素晴らしい虫歯治療法なのか?

リチャード・V.・タッカー

現在、虫歯治療においては、数限りない治療法があり、患者さんはその中から1つを決めなくてはいけません。

最近では、「審美歯科」が注目を集めています。これは歯科医師がつくり出した流れなのか、患者さんがつくり出した流れなのかはわかりません。しかし、治療法は、白いという理由だけで選んで欲しくありません。

歯を変色させず、銀の詰めものと比べると目立たないので、奥歯に詰めるゴールド(金)は、ついこの間までは審美修復と考えられていました。しかし、審美修復という言葉が世に広まるにつれて、ゴールドを使った治療でも、笑顔の邪魔をしない、つまり金を見せない治療法が開発されました。例えば、上あごの歯では、外れにくくするために、歯の外側まで数ミリをゴールドで覆っていました。しかし、インビザブル・インレー(invisible inlay / 外から見えない詰めもの)テクニックが開発され、ゴールドを見せない治療が可能になりました。また、なるべく外から見えない位置に歯と詰めものの境界を設定する、という方針に変わってきました。それらのテクニックを学ぶことで、ゴールドを全く見せないか、見えても気づかないほど小さく抑えることができます。また、虫歯がひどく、かぶせものが必用な場合は、金のかぶせものではなく、白いかぶせものを検討することも必用だと思います。新しい材料や治療法が開発されたことで、ゴールドの使い方にも変化が訪れています。

先ほど「白いという理由だけで治療を選んで欲しくありません」と書いたのは、詰めものの平均寿命を始め、歯の形をきちんと回復できるか、きちんとフロスを通せるか、かみ合わせを維持できるか、など目で見えない部分を考慮してもらいたいからです。今日使われている歯科材料では、その点に関してゴールドにかなうものはありません。それらの中でも、ゴールドを選ぶ1番の理由は、「長持ちする」ということ。ゴールドを入れるときに「この治療は生涯持ちますよ」と約束はできません。しかし、再治療を受けることなく、装着された当時のまま、40年~50年が経過した、数え切れないほどたくさんのゴールド修復を見てきました。

長女が生まれたとき、私の妻は全ての奥歯に入っていたアマルガム(銀の詰めもの)をはずして、全てをゴールドで治しました。(彼女はフッ素が普及する前の世代です。)たった1本の咬頭(ゴールドとは関係ない部分)が欠けてしまった以外、残り15本は、60年前に治療した当時のままの状態を保っています。2次虫歯になったり、歯と詰めものに隙間ができたり、かみ合わせが壊れたりした歯は1本もありませんでした。

このような経験をもとに、ゴールドの利点・欠点を上げていきたいと思います。


ゴールドを使う欠点

1. ゴールドは歯の色をしていない

ゴールドは白い色ではありませんが、金色は歯ぐきの色に近く、また奥歯では見えにくいので目立ちません。しかし、笑ったときに良く見える前歯にはお薦めできません。話したり、笑ったときに、目立たないように考慮して治療をします。

2. 他の治療法と比べると治療費が高い

金による修復はコンポジットレジンや保険診療と比べると治療費が多くかかります。その理由は、型どりと装着の2回の通院が必用なこと。それに加えて、詰めものを作らなくてはならないので費用がかかります。また、材料の発達や、治療法の工夫によって治療時間は短くなり、精度は上がっていますが、ゴールドをぴったりと入るようにするためには、壁を平らにしたり、丸くしたり、他にも細かな治療操作に時間をかけなくてはなりません。

ゴールド自体の大きさはさほど治療費に影響しませんが、技術トレーニングが必用で治療に時間がかかるため治療費が高くなります。しかし、ゴールドの耐用年数を考慮し、再治療がより多く必用な治療法と比較すれば、1本の歯にかかる治療費としては、極端に高いものではありません。まして、歯を失ってからインプラントを入れるよりも遥かに安いものです。

3. 高度な技術や些細なことに気づく能力が歯科医師に必要

長持ちするゴールド治療ができるようになるには、歯科大学卒業後もきちんとした勉強・トレーニングを続け(もちろん他の治療法も同様です)ゴールドが持つ特性を最大限に引き出さなくてはいけません。歯科医師に技術を要求する治療法は、勉強・努力が嫌いな歯科医師には行えません。


ゴールドを使う利点

1. ゴールドは、折れたり、割れたりしない

ゴールドは、セラミックスやコンポジットレジンなどの材料のように折れたり割れたりすることがありません。

2. ゴールドは、腐蝕せず隙間ができない

金で治療した歯を使って何年間も食事を噛んだ後でも、金と歯の境界は治療当日の状態を保ち続けます。コンポジットレジン(ハイブリッドセラミックス)による修復は、歯と同じ色ですが、徐々に腐蝕するため、歯の境界が欠けたり着色したりします。

3. ゴールドは、歯と同じ熱膨張率である

熱膨張率が歯に近いということはとても大切です。歯・歯科材料を含む地球上のすべての物質は、冷たいと縮み、熱くなると膨らみます。冷たいアイスクリームから熱いお茶まで、お口の中の温度は様々に変化するので、つめものと歯が同じ熱膨張率であるのが大切です。

4. ゴールドは、歯の縁を守る

ゴールドは歯に完全にぴったりとはまり込むため、周囲の歯質 (エナメル質)をかむ力から守ります。また、歯の節(エナメル小柱)を包み込むことで、それらが欠けることもありません。

5. ゴールドは、正しい歯の形を回復することができる

反対の歯ときちんと合わなければかむことができませんから、虫歯で失われた歯を修復する場合は、金以外の治療法でも、歯の形に戻すのが基本となります。金による修復では、型どりをしてとても精密な歯の複製模型を作り、お口の外で時間をかけて作るので、その歯にとって一番理想的な形・かみ合わせをつくることができます。

6. ゴールドは、つややかで舌触りの良い仕上げができる

表面が綺麗に研磨されていることには利点があります。つややかな表面はプラーク(虫歯菌)を集めず、舌で触ってザラザラすることは決してありません。お口の外で研磨をするので、唾液に邪魔されたり器具が届かなかったりがなく、お口の中で最初から最後まで研磨する治療法より確実です。

7. ゴールドは、形が変わらない

金のつめものは形が変わりません。現在では他の歯科材料も進歩したので、金だけが持つ利点ではなくなってしまいましたが、25年前に主流であった軟らかいつめものは、お口の中で形が変わってしまうことがありました。

8. ゴールドは、吸水性がない

金は水分を吸い込まないので、唾液や食べものに汚染され、劣化することがありません。コンポジットレジン(ハイブリッドセラミックス)は、吸水性があるので、再治療の際に削ると腐敗臭を発生します。

9. ゴールドは、口の中で酸化されない

金のような貴金属は酸化されないので、変色したり劣化することがありません。コンポジットレジン(ハイブリッドセラミックス)は、治療直後は歯と同じ色できれいですが、治療後長い時間が経つと変色・劣化してきます。されど、コンポジットレジン(ハイブリッドセラミックス)は、ゴールドと比較した欠点は多くとも、前歯の虫歯治療には最適な治療法です。

10. ゴールドは、歯を変色させない

銀の詰めものはイオンが溶け出して歯を黒くしてしまいますが、ゴールドでは起こりません。時として残っている歯が薄いときは、金の色が透けて見えることがあるかも知れませんが、ほぼ目立ちません。

11. ゴールドは、隣の歯との接触点を正確に回復できる

金のつめものは、模型上で時間をかけて作るので、隣の歯との接触点を正確に回復できます。歯間に食べものが入り込むのを防ぎます。また、接触点には”食べものの通路”と呼ばれる、ゆるやかにカーブした形や溝を作ることで、食べものを効率よく噛むことができます。簡単に言えば、失われる前の歯の形を再現できると言うことです。

12. ゴールドは、審美的である

歯と同じ色の材料が発達する以前は、歯の色を変えないことや、銀に比べて見た目が奇麗なことから、金は審美治療の材料として使われていました。しかしながら、時代は変わり、現在のゴールド修復では、金が目立たないように治療するテクニックを駆使します。可能な限り歯を削らず、外から見えないように、少し手前の位置にゴールドと歯の境界を設定します。

13. ゴールドは、接着剤に頼らない

歯と同じ色の治療は、接着剤の発展によって可能となりました。しかし、それを言い換えれば接着剤の寿命がその治療法の寿命となります。一方、金のつめものは、歯にはまり込む形で維持されているため、ほとんど接着剤に頼りません。従って、接着剤の寿命に左右されることがなく、金の寿命が治療法の寿命となります。つまり、とても長持ちします。

14. ゴールドは、歯ぐきを健康に保つ

金によるつめものには、他の材料と比較して、歯ぐきを健康に保つことができる3つの理由があります。金と歯の境目は、繊細な器具で触っても感じられないほどに密着しているので、プラークが溜まらないこと。ゴールドにアレルギーはほとんどありませんので、歯ぐきに触れてもアレルギー性の炎症が起きないこと。金はとても奇麗に研磨できるので、ザラザラせず、歯ぐきを刺激しないこと。

15. ゴールドは、かみ合わせ(反対側)の歯をすり減らさない

セラミック・ジルコニアを使った治療では時間の経過とともに反対側の歯が過剰にすり減ってしまうことが多く見られますが、金を使った場合は起こりません。コンポジットレジン(ハイブリッドセラミック)とは違い、詰めもの自体がすり減ってしまうこともありません。

16. ゴールドは、水銀が入っていない

以前に主流だった銀の詰めものには水銀が入っていました。歯科で使う水銀やその他の金属・レジンは危険はないだろうと言われていますが、気になさる方にはゴールドが選択肢となるでしょう。

17. ゴールドは、自分の歯と同じようにすり減る

ゴールドは自分の歯とほとんど同じ固さです。人間の歯は年齢と共に食事などで少しずつすり減っていきますが、ゴールドも同じように少しずつすり減ります。つまり、自分の歯と同じように少しずつ変化してくれると言うことです。これは、他のどんな材料でも得られない、ゴールドだけが持つ特徴です。

18. ゴールドは、毒物を出さない

研究結果によると、コンポジットレジン(ハイブリッドセラミック)修復からは、環境ホルモンのような毒物が出ることがわかっています。健康面には影響はないとされていますが、水銀のように、気にする患者さんは、ゴールドを選ばれると良いでしょう。

19. ゴールドは、最小の厚さで長期間かみ合わせを支えられる

コンポジットレジン(ハイブリッドセラミックス)は、固まるときや熱膨張率によって、歯にわずかなに亀裂を入れることがあります。銀の詰めもの(アマルガム)も歯に亀裂を作ります。亀裂が入ると、かんだときや熱の刺激で歯がしみるようになります。このようなことはゴールドでは起こりません。引張強さを含めたゴールドの性質によって、歯をたくさん削ることなく最小の厚さで、かみ合わせを支え、歯を守ることができます。

20. ゴールドは、非常に長持ちする治療法である

金による治療は、一般に生涯修復であると言われます。40年~50年前に治療された金のつめものを良く目にします。生涯使うことができる可能性。ゴールドを選ぶ最も明白な理由です。生涯使える治療がありますか?と訪ねるならば、ゴールドによる治療が答えとなるかも知れません。


原文:Why Gold Castings are an Excellent Tooth Restoration, Revised — January 11, 2008

参考文献:Masters of Esthetic Dentistry
Retrospective Clinical Evaluation of 1,314 Cast Gold Restorations in Service from 1 to 51 years
Terry Donovan, DDS
RJ Simonsen, DDS, MS
G Guertin, DDS, MSEd
RV Tucker, DDS

日本語訳: 清水 雄一郎, 2014年6月


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