リチャード・V・タッカー先生は、保存的ゴールド修復に関する多くの概念や精密な技術を開発し、それらを学びたいと望む人には誰に対しても惜しみなく共有し、伝えてきました。一方で、ただ聞いたり読んだりするだけでは不十分である、という強い信念を常に持っていました。真に習得するためには、自ら実際に行わなければならないのです。そして、熟練した指導医の手と経験に導かれ、仲間の前で実際に手技を行うことができるタッカースタディクラブほど、最適な環境は他にありません。

指導医

タッカー先生は、各スタディクラブが自分の意志で指導医を選ぶべきだ、と考えていましたが、最終決定の際に必ずタッカー先生に相談するよう求めていました。そうすることで各スタディクラブにとって最も良いと思う指導医を提案してくれることもあります。学会本部は、タッカー先生の考案した指導医選びのガイドラインに沿って、お手伝いすることができます。このような手順で指導医を選ぶことにより、タッカーテクニックによる金修復法を正確に勉強できていることを、学会本部が確認・把握することができます。指導医が、タッカーテクニックに関する正しい哲学・知識・技術を持つこともまた大切です。

スタディクラブの臨床実習では、指導医は、1人ずつ、1ステップずつの指導を行うことで、哲学的な目的を話し合い、確実な診療手順を行っているかどうか確認していきます。診療手順のポイントを、指導医が実演して見せることもあります。指導医は、勉強会の日程、会費の徴収、新しいメンバーの決定に関しての責任は負いません。これらは、各スタディクラブ役員の責任となります。

一般的な日程

窩洞形成の日:患者さんの状態を確認し、患歯の検討から始めます。検討の際にはレントゲン写真を使うべきでしょう。窩洞外形と治療中に起こりうる事態をよく考え、指導医と話し合います。術前の口腔内写真を撮ります。これは、クリティーク(実習批評会)の際にとても役に立ちます。ラバーダム防湿を施した後、既存の修復物及びう蝕を除去します。この時点で、もう一度、修復方法を検討します。もし、状況が術前に予想したものと異なる場合は、治療方法を変更します。それから、しかるべき材料でブロックアウトを行った後、窩洞形成を完了します。指導医の意見を聞きたい場合には、どのような状態でも中断し、質問をして、疑問を解決します。指導医に形成完了の最終チェックをしてもらい、OKならば、口腔内写真を撮り、他のメンバーへ対してのアナウンスを行います。

このような方法は、最初のうちは抵抗があって臆病に感じるかも知れませんが、すぐに慣れてきます。印象採得を行い、再び指導医のOKをもらえたならば、暫間充填を行い、患者さんへ術後の注意を行った後、帰します。

合着の日:患者さんをチェアーに着席させ、暫間充填がどうであったか問診します。各メンバーは、指導医と一緒に鋳造物の形態や適合を確認します。全てに問題がなければ、準備完了です。ラバーダムを施し、口腔内で鋳造物の適合を確認します。調整が完了したら、手順に従って合着・研磨・仕上げを行います。合着の時も、疑問があればいつでも指導医を呼び、質問したり手助けを求めたりして下さい。全てが完了したら、口腔内写真を撮影し、他のメンバーにアナウンスを行い、治療が完了した状態を見てもらいます。続いて、患者さんに術後の注意を行った後、帰します。すべての実習が終了したら、指導医と共にクリティークセッション(症例考察・批評会)を行います。その際、次回からの治療に役に立つような提案やアドバイスが示されます。メンバー全員の技術は、勉強会を行うたびに必ず向上します。また、その過程を見るのはとても驚くべきことです。

クリティーク(症例批評会)が終わったら、各スタディクラブの役員は小さな役員会議を開き、指導医にお礼を伝えます。格式通りの勉強会はこれで終わりです。夕食に向かい、会話を楽しみます。カジュアルな心持ちで構いませんが、なるべく歯科の話をするようにします。

海外でのスタディクラブの様子2
海外でのスタディクラブの様子
海外でのスタディクラブの様子
ゴールドを使ったむし歯治療を指導する
日本でのスタディクラブの様子
タッカー先生の技術を応用したむし歯治療を見学する
日本でのスタディクラブの様子2

実習の構成内容

臨床実習の内容は、各スタディクラブの成熟度に応じて変化します(継続した金修復の教育によって各メンバーの熟練度が上がるため)。指導医の元、何度も実習を繰り返すことでのみ上達すると考えます。一般的なスタディクラブは、9月から翌年5月まで、月に1度集まり、半日の実習を行います。少なくとも合計で4日間分に値する実習を行いたいところですが、指導医や実習の頻度は、地理的要因やその他の困難な要因によって異なるかも知れません。

毎回の実習の後には、ミニレクチャー行うか、もしくは講演でなくとも教育を行う時間を持つようにします。クリティーク(実習批評会)は、臨床実習の締めくくりとなります。その後、社交的な時間を過ごします。一般的には皆で夕食に食べに行きます。実習の頻度や期間にかかわらず、一般のスタディクラブの日程で示した全てのイベントを行うようにします。

メンバーは、毎回の臨床実習に出席し、患者さんの治療を行うことを誓い、それを喜んで実行すべきです。もし、患者さんの治療を行えない場合でも、臨床実習には出席し、見学を行うことでクリティーク(臨床批評会)に参加できるようにすべきです。もし、患者さんがいなくとも、指導医のもと、顎模型や抜去歯を用いた実習を行うことで、スタディクラブのメンバーであることを最大限に利用することができます。

実習参加者は、助手を用意して治療に臨み、必要な材料・器具は各自で用意します。各メンバーは、形成終了時、研磨完了時などの重要なアナウンスの際は、治療を一時中断し、それに従う努力をします。

多くのスタディクラブがデジタルカメラを用いて症例を記録しています。そうすることで、クリティーク(実習批評会)において、簡単にプレゼンテーションを行えます。そのファイルは、各メンバーが、臨床で様々な困難な状況に出合ったときに対処する方法を思い出す手がかりとして使うことができるでしょう。

役員構成

タッカー先生は、スタディクラブでの経験学習が学会活動の中で一番の中心となるように、常に考慮しています。各スタディクラブは、メンバー選びの基準、出席、会費、勉強会の日程や方法を、簡単な規則としてまとめる必要があります。この規則には、役員構成(役職や期間)を含めた方が良いでしょう。学会からの意見として、各スタディクラブで選ぶべきは、会長、秘書官/会計係、学会本部との連絡係、そして、指導医です。

会長 (President)

スタディクラブ運営の把握、毎回の勉強会後に開かれるスタディクラブ運営に関する会議の開催。

秘書官 (Secretary)

スタディクラブ運営に関する議事録の記録、指導医からクリティークセッション時にもらった意見を覚え書きとして記録。各スタディクラブは、必ず議事録・意見を記録しなくてはなりません。その議事録・意見の覚え書きは、都度メンバーに送らなくてはなりません。

会計係(Treasurer)

各スタディクラブの財政状況の管理、勉強会開催費の予算の設定、費用の徴収(診療室のレンタル代、指導医のお礼、夕食の予算の設定、学会本部への年会費の徴収)学会本部の年会費は、各スタディクラブの勉強会開催費の中に含めて徴収し、最新の名簿(住所の変更を含む)と役員の名前一覧を、学会本部の会計係へ、毎年11月1日までに送らなくてはなりません。学会本部の年会費は、Operative Dentistry学会誌の購読費用が含まれます。本学会は、Academy of Operative Dentistry(保存修復学会)とAmerican Academy of Gold Foil Operators(アメリカ金箔充填学会)と共に、Operative Dentistry学会誌のスポンサーとなっています。

(秘書官 (Secretary)・会計係(Treasurer) この2つの役員は兼任しても構いません)

代表理事/連絡役

この役職は、学会本部と各スタディクラブを結びつけ、学会本部の会計係から年会費支払いのお知らせを受け取ります。学会運営にとって重要な意見を本部に伝えたり、本部から“各クラブがどう思っているか”などの質問を受けた場合、それを各メンバーに尋ね、結果を本部へ報告することもあります。この役職は、長い期間学会に所属し、学会本部が良く知っている人であるべきです。

代表理事/連絡役は、年次総会の代表理事会に参加します。もし、参加できない場合は、同じスタディクラブの中から代理に出席できる人を選び、参加させなくてはいけません。

写真による記録

記録に残すことは、スタディクラブで過ごす時間を有効に使うための、最も重要な手段のひとつです。

議事録や出席者を記録保存するだけでなく、全てのメンバーは、臨床実習で行った窩洞形成、仕上げ・研磨終了後の写真を撮影保存するべきです。

そして、現代に生きることの利点は…

デジタルカメラを使えること。撮影後、その場ですぐ確認することができ、万が一、納得のいかない写真を撮ってしまったなら、費用をかけることなく、すぐ再撮影することができます。

車に例えればイタリアの最高級スポーツカーを購入するようなものですので、Nikon D3+100mmマクロレンズのような、フルサイズセンサーを持つ最新のデジタルカメラである必要はありません。アマチュア向けミディアムクラスのデジタルカメラに一般的なマクロ用レンズ・フラッシュをつければ、十分に目的を果たすことができます。その組み合わせで、我々が求めているのとは違う分野を追求している、いくつかの超高級歯科雑誌に登場するような写真より、遥かに質の良い写真を撮影することができます。

どうやら、各スタディクラブには、口腔内写真を撮影することに熱心なメンバーが、たいてい1人は所属しているようですし、その人は上手に写真を撮影できるアシスタントを連れてきたがるようです。最初のうちは、形成後や合着後の写真を他のメンバーに見られるのは、あまりに冷酷な仕打ちだと感じるかも知れませんが、数回の実習を経験した後には、毎回、確実に技術が上達していることを実感するでしょう。また、これらの写真は、実習後のクリティーク(症例批評会)をより充実した時間にします。

そして数年後、自分の第1回目の実習で行った窩洞形成を振り返ったり、指導医(mentor)と一緒に実習を行うことでしか達成し得ないことに気づいたりするのは、言葉では表せない楽しさがあります 🙂

スタディクラブに加入する

もし、あなたが鋳造金修復もしくは、金箔充填修復を本気で学びたいと思うならば、近所のスタディクラブを訪ねてください。私たちはいつでもゴールドを学びたいと思う先生や技工士さんの見学を歓迎しています。

お問い合わせのページより、遠慮なくご連絡ください。

スタディクラブを始める

1.金修復(ゴールドインレー・ゴールドアンレー・ゴールドクラウン・ゴールドフォイル)を学ぶことに興味があり、卓越した臨床歯学を長く追究すると誓うことができる、8人から12人のメンバーを集めます。

2.一度になるべく多くのメンバーが治療することができる診療所を探します。歯科大学・衛生士学校・軍事施設・大きな個人の診療所が良いでしょう。

3.タッカー先生の技術を応用した鋳造金修復治療を熟知した先生を指導医として選びます。指導医は、あなたのスタディクラブに貢献する意志のある人でなくてはなりません。(その際、必ず学会本部に相談して指導医を選ばなくてはなりませんが、私たちはお手伝いをします。)

4.スタディクラブの役員を決定し、予算と会費を決定します。

5.スタディクラブの名前を決定し、銀行口座を開きます。

6.スタディクラブを開催する具体的な日程を計画します。日程は、施設に合わせることもあれば、地理的な条件も影響します。

7.学会本部の秘書官を通して、R.V.タッカー・スタディクラブ公式メンバーとなることを申請します。

責任

学会に対して各スタディクラブが持つ責任

1.毎年11月1日までに会費を納入すること。

2.会費納入の際に、最新のメンバー表と役員リストを一緒に送ること。

3.学会と連絡を取る代表者・連絡役を一人立てること。また、その者は年次総会で行われる代表者会議に出席するか、出席できない場合には代理人を送ること。この会議は学会本部の運営にかかわるもので、各スタディクラブは一票の投票権を持ち、それを使わなくてはなりません。

各スタディクラブに対して、学会が持つ責任

学会は、様々な方法を使って各スタディクラブをサポートすること。(教育用の材料・講演・学会を通しての情報伝達や、年次総会の開催)

The Study Clubs